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004 安宅(あたか)

(作者) 観世小次郎信光。ただし能本作者註文は作者不明としている。
(曲柄) 四・五番目(略二番目)
(季節) 二月
(稽古順) 三級(但シ勧進帳ハ重習)
(所) 加賀国能美郡安宅
(物語・曲趣) 頼朝と不和になった義経は、主従十二人の作り山伏となって都を落ち奥州へ向かい、加賀国安宅関にさしかかった。かねてより、山伏取調べの厳命を受けていた関守富樫某は、一行を怪しんでその通行を差し止める。

先導役の弁慶は、南都東大寺建立のための勧進山伏であると称したが、それだけでは関を通してくれない。そこで、弁慶は山伏の尊厳を説いたり、巻物を勧進帳と見せかけて読み上げたり、強力姿の主君義経を打擲したりと、いろいろ苦心の末に一行はやっと通過を許された。

関を遠ざかって一休みして、これまでの苦労を語り合っている時に、富樫は先刻の非礼をわびるために酒を出して勧めたので、弁慶は舞を舞って酒宴に興を添えた。折をみて、一行はこの場を立ち奥州へ下って行く。

弁慶の思慮と沈着が、如何に主君の危機をのがれせしめたか、というのが主題となっている。

作り山伏=にせ山伏。作りは偽装の意。

(役別) シテ 武蔵坊弁慶、 ツレ 義経ノ郎党(九人)、 子方 源義経、 ワキ 富樫某
(所要時間) 五十五分