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008 嵐山(あらしやま)

(作者) 金春禅鳳。但し自家伝抄には世阿弥元清作とある。
(曲柄) 初能 一番目 神祇物
(季節) 三月
(稽古順) 四級
(所) 山城国桂葛野郡嵐山
(物語・曲趣) 嵐山の花の頃に花の様子を見に来た勅使が花を眺めていると、老人夫婦が花の木陰を掃き清め、花に向かって礼拝している。

勅使がそのわけを尋ねると、「我らはこの山の花守であるが、この山の櫻は、元来、吉野山の櫻であって、子守・勝手の二神が影向される神木であるので礼拝するのです」と答え、「実は、自分達夫婦がその二神である。夜までそこで待ちたまえ」と言って、吉野山の方へ去った。

果たしてその夜、子守・勝手の二神が現れて、神楽を奏し、さらに吉野山の鎮守である蔵王権現も來現して、花に戯れ、栄え行く春ののどかさを見せて帰って行った。

花盛りの嵐山の華やかな雰囲気を示そうとした曲で、嵐山の櫻が吉野山の櫻を移し植えたものであるという言い伝えをよりどころとしている。

子守・勝手の二神=子守りは吉野山中に鎮座する水分神社の神。勝手は吉野町の山口神社の神を指す。
蔵王権現=吉野山金峯山寺の本尊。

(役別) 前シテ 尉、 後シテ 蔵王権現、 前ツレ 姥、 後ツレ(子方ニモ) 子守明神、 後ツレ(子方ニモ) 勝手明神、 ワキ 勅使、
 ワキツレ 従者(二〜三人)
(所要時間) 二十五分