【う】
015 善知鳥(うとお)

(作者) 世阿弥元清
(曲柄) 
四番目 (略二番目)
(季節) 
四月
(稽古順) 
三級
(所) 
前、越中国中新川郡立山
     後、陸奥国外ヶ濱
(物語・曲趣) 
越中の立山で禅定をした旅僧が山を下りて来た。

そこへ一人の老人が現れて来て、旅僧に対して「陸奥へ下られるのであれば、去年の秋に死んだ外の濱の漁師の家を訪れて、蓑笠を手向けるように伝えてください」と頼み、証拠のためにと老人が着ていた麻衣の袖をといて渡した。僧はそれを引き受けて別れた。

旅僧は漁師の遺族を訪ねて、妻子に対して亡者の伝言を語るとともに蓑笠を手向けて回向をした。すると、漁師の亡霊が現れて「娑婆で漁師を渡世としていたが、善知鳥を殺した報いで、今は化鳥となった善知鳥に苦しめられている地獄の様子」を語る。そのあと、亡霊は僧の助けを求めて消え失せた。

親子の愛情が深いといわれている善知鳥やすかたを殺したために、今は我が子にさえも近づけない亡者の苦患を描いたり、どこまでも地獄の呵責の表現に重きを置いている。

立山で禅定=立山は富山県中新川郡の東南に聳える高山。この山に登山して修行することを立山禅定といった。
外の濱=青森湾に面した沿海の土地の古称。

(役別) 
前シテ 尉、 後シテ 漁師、 ツレ 漁師ノ妻、 子方 千代童、 ワキ 旅僧 
(所要時間) 
三十八分