【え】
020 烏帽子折(えぼしをり)

(作者) 宮増某
(曲柄) 
五番目 (略二番目)
(季節) 
九月
(稽古順)
 五級
(所) 
前、近江国蒲生郡鏡宿
    
後、美濃国不破郡赤坂宿
(物語・曲趣) 
三條の金売り吉次が弟を連れて東へ下ろうとすると、牛若が追って来て同行を求めた。そこで一緒に近江の鏡の宿まで来たとき、牛若に追っ手がかかっていることがわかった。

そこで、牛若は変装して髪を切り、烏帽子屋に立ち寄って左折の烏帽子をあつらえた。左折にさせたことで、烏帽子屋の主人は牛若の身分をかぎ出して祝言を述べる。

牛若は代金の代わりに刀を与えて立ち去ったが、亭主の妻がその刀を見て「私は鎌田正清の妹でこの刀には見覚えがある。先ほどの人は牛若君であろう」と言うので、驚いた亭主は妻とともに牛若の後を追って刀を返す。

牛若一行が美濃国赤坂の宿に泊まっていると、熊坂長範が吉次の財貨を狙って夜襲して来た。

これに対し牛若はただ一人秘術を尽くして大勢を切り倒し、ついに長範をも討ち取る。

前段と後段で全く異なった場面をつなぎ合わせているのは牛若(子方)であり、この能は子方を生かすために書かれているかのようである。

左折の烏帽子
=左折は烏帽子の頂きを左に折ること。源氏は左折、平氏は右折。烏帽子は元服した男子の着る帽子。

(役別) 
前シテ 烏帽子屋ノ亭主、 後シテ 熊坂長範、 前ツレ 烏帽子屋ノ妻、 子方 牛若丸、 ワキ 三條吉次、
 ワキツレ 三條吉六
(所要時間) 
四十二分