【は】
101 班女(はんぢょ)

(作者) 世阿弥元清
(曲柄) 四番目 (略三番目) 狂女物
(季節) 七月
(稽古順) 二級
(所) 前、美濃国不破郡野上宿
    後、京都洛北下鶴
(物語・曲趣) 美濃国野上の宿の遊女花子は、東国に下る途中に立ち寄った吉田中将と契りを結び、その形見として取り交わした扇に眺め入って引きこもり、他の客に会おうとしなかった。そこで、遂に宿の長に追い出されてしまう。

その秋、吉田中将は東国からの帰り道に野上に立ち寄り花子を訪ねた。しかし、花子はいなかったのでそのまま都に帰り、下賀茂神社に参詣する。すると、狂女になった花子が来て神に祈願を捧げる。

それを見た少将の供人が「狂って見せよ」と言うと、狂女は「無常な事をおっしゃるな」と言って思慕の情の切なさを述べる。

そのうち狂女は次第に心が乱れて、遂に形見の扇をとって狂おしく舞う。

その扇によって、狂女が花子である事がわかり、少将は花子と夫婦の契りを結ぶ事になる。

地方の女が都の貴族に寄せる思慕の情を哀れにやさしく描こうとした曲で、その手段として扇を使い、秋扇の情趣を利用したのである。

野上の宿=岐阜県不破郡関が原の東方にあった宿駅。
宿の長=駅舎の女主人をいう。

(役別) 前シテ 花子、 後シテ 前同人、 ワキ 吉田少将、 ワキツレ 従者(二〜三人)
(所要時間) 四十五分