蝉の鳴き声&蝉の儚い命
7年と7日の蝉の一生を考える


久しぶりにふるさとで盛夏を過ごした。とにかく暑い夏であった。「夏は暑い」は当然至極のことではあっても、その暑さは尋常ではなかったように思う。

その暑さの中で、今年は何故か蝉の鳴き声に引き寄せられてしまったのはどういうことだろうか。耳をつんざき、騒音とさえ感じさせるあの大きな合唱がやけに気になったのは何ゆえか。

原因は直ぐに気づくこととなった。それは無数に散らばる羽化後の脱け殻と命果てた亡き骸を目の前にして、蝉の生態に神秘的な思いを馳せたからであった(2006/7-8)


空蝉は縋れるものには何でも縋る習性があるようだ ケヤキの葉っぱに鈴なりとなった空蝉


「7年間の地中生活」…。
蝉の幼虫は、地中の木の根の樹液を吸いながら地中で7年の長期間生活するといわれる。この"雌伏期間"が過ぎると、地表に穴をこじ開けて這い上がり、地上の縋れるものに縋りながら羽化し成虫となり、羽ばたいて行く…。何という神秘的現象か。

「7日間の地上生活」…。
羽ばたいて地上生活を始めた蝉の命は儚いもの。♂は朝から晩まで全身全霊を使って♀を求めて歓喜のラブコールを発し続ける。これが、いわゆる蝉の鳴き声なのだ。そして、両者の交尾、産卵の生活はわずか一週間で終焉を迎え、ともに命を絶つ…。何という神秘的現象か。

短い地上生活のゆえをもって「蝉の命は儚い」といわれる。果たしてそのように断定できるのだろうか。7年間の地中生活(2555日)は地上生活(7日)の365倍に相当する。すなわち、人生(蝉生?)最後の仕上げとなる"至福期間"は、長い"雌伏期間"があってこそ実現されるもの…と考えられないでもない。

人間の"至福の晩年"に置き換えるとどういうことになるか。それは常日頃の生活の仕振りによってもたらされるという事かもしれない。


子供たちは蝉取りが大好き。でも直ぐに死んでしまうのだ! 抜け殻と亡き骸を出生地の出口に置いての記念撮影!