平成16年(2004年)上期・1月〜6月


   



平成16年(2004年)6月26日
第94回METI謡曲連盟春季大会

○ 年2回開催される伝統の謡曲大会。幹事役の一員に加わって初の謡会でもあった。

○ 所属する流派別に演目を披露していく従来方式を踏襲。事前に作成されたプログラムは次のようなものであった。
(素謡)
 観世流…「鵺」「竹生島」「草子洗小町」の3曲
 喜多流…「百萬」
 宝生流…「羽衣」
(仕舞)
 喜多流…「敦盛」「富士太鼓」「経正」

○ 出番は、「」のシテ(舟人、鵺)役と「草子洗小町」の地謡。



平成16年(2004年)6月12日
創立70周年記念松謳会

○ 昭和8年(1933年)に先代松木福蔵によって創立された松謳会は、師松木千冬から現在の松木千俊に受け継がれ、70年の歴史を刻むこととなった。記念の会にふさわしく、大曲を披露された諸氏の熱演は見事であった。






平成16年(2004年)5月22日
第231回定例会

○ 本日の演目は「草子洗小町」「吉野天人」「遊行柳」「須磨源氏」「」「鵜飼」の6曲。

○ 夕方6時から開催の結婚披露パーティーへの出席との掛け持ちとなり、4時過ぎに退席。あわただしい謡い稽古となった。



平成16年(2004年)4月24日
第230回定例会

○ 本日の演目は「嵐山」「鞍馬天狗「羽衣」「誓願寺」「摂待」の5曲。
山城国嵐山を舞台とする「嵐山」、駿河国三保松原を舞台とする「羽衣」。いずれも時節柄の華やかさある名曲にて、すこぶる気分良し。

嵐山
『笙の岩屋の松風は。笙の岩屋の松風は。実相の花盛り。開くる法の声立てて今は嵐の山桜。菜摘の川の水清く。真如の月の澄める世に。五蜀の濁りありとても。流れは大堰川その水上はよも尽きじ。いざいざ花を守ろうよいざいざ花を守ろうよ。春の風は空に満ちて。庭前の樹を剪るとも神風にて吹き返さば妄想の雲も晴れぬべし。千本の山桜のどけき嵐の山風は。吹くとも枝は鳴らさじ。この日も既に呉竹の。夜の間を待たせ給ふべし。明日も三吉野の山桜。立ち来る雲にうち乗りて。夕陽残る西山や。南の方に行きにけり南の方に行きにけり』

羽衣
『春霞。たなびきにけり久方の。月の桂の花や咲く。げに花鬘色めくは春のしるしかや。面白や天ならで。ここも妙なり天つ風。雲の通路吹き閉じよ。少女の姿。暫し留まりて。この松原の。春の色を三保があ崎。月清見潟富士の雪いづれや春の曙。類ひ波も松風も長閑なる浦の有様。その上天地は。何を隔てん玉垣の。内外の神の御裔にて。月も曇らぬ日の本や』




平成16年(2004年)3月27日
第229回定例会

○ 出席者が久しぶりに10名の大台を越え、12名による賑わいの謡い会となった。本日の演目は「忠度」「田村」「盛久」「国栖」「春日龍神」の5曲。

○ 折りしも、今日は朝から春爛漫のさくら日和。「田村」では、一同が「春宵一刻値千金の風情を楽しむ…」と吟詠する。「夜桜見物に出かけたい心境だね…」誰からともなく出てきた言葉であった。

田村
『あらあらおもしろの地主の花の景色やな。桜の木の間に洩る月の雪も降る夜嵐の。誘ふ花とつれて散るや心なるらん。さぞな名にし負ふ。花の都の春の空。げに時めくるよそほひ青陽の影緑にて。風長閑なる。音羽の瀧の白糸の。繰り返し返しても面白やありがたやな。地主権現の花の色も殊なり。』




平成16年(2004年)2月28日
第228回定例会

○ 本日の演目は「東北」「千手」「室君」「弱法師」「櫻川」の5曲。なかでも、お気に入りは「東北」「弱法師」「櫻川」の3曲。

○ 「東北」…上品な上臈姿の和泉式部をシテ主人公として、その気品のある美しさを梅の花に配合させた見事さ。
「弱法師」…家を追われた盲目の少年とその息子を追う父親との涙の物語。
「櫻川」…幼心に母親の生活苦を見かねて母元を離れた子供とその行方を探す母親の心を伝える物語。

東北
『今はこれまでぞ花は根に。鳥は古巣に帰るぞとて。方丈の燈火を。火宅とやほ人は見ん。此処こそ花の台に和泉式部が臥所よとて。方丈の室に入ると見えし夢は覚めにけり見し夢は覚めて失せにけり』

弱法師

『花をさへ。受くる施行の色々に。受くる施行の色々に。匂ひ来にけり梅衣の。春なれや。難波の事か法ならぬ。遊び戯れ舞ひ謡ふ。誓ひの網には洩るまじき。難波の海ぞ頼もしき。げにや盲亀の我等まで。見る心地する梅が枝の。花ののどけさは難波の法によも洩れじ』

櫻川

『三吉野の。三吉野の。川淀瀧つ波の。花を抄はば若し。国栖魚やかからまし。叉は櫻魚と。聞くもなつかしや。何れも白妙の。花も櫻も。雪も波もみながらに。抄ひ集め持ちたれども。これは木々の花まことは.。我が尋ぬる。櫻子ぞこひしき我が櫻子ぞ恋しき』




平成16年(2004年)1月24日
第227回定例会・謡初め会


○ 「紋付はかま」に身を正しての謡い初め、今年最初の定例会兼新年会である。丹田に力を入れて、角帯をギュッと締める。襟をそろえ、腰に扇を差して正座する。気持ちが引き締まって、さわやか。ご婦人4人の華やかな和服姿もあって、華やいだ雰囲気となった。

○ 最初にお神酒をいただいた後で全員の挨拶。終わって、「神歌」を謡う。神聖な演技として特に重んじられている重習曲だ。シテの大役(Sinさん)のお相手役(ツレ)を勤めることとなったが、どうにか無難に果たせたようだ。

○ 本日の演目は「神歌」「鶴亀」「」「昭君」「西行櫻」「二人静」の6曲で、いずれも新春に相応しいものとなって良かった。

○ 最後に、今年の御題小謡「幸」を皆で合唱して閉会。宴席へ移動。

平成16年新春 御題小謡 幸
『朝日さす。雪間を分くる福寿草。黄金に光る幸草。寿福延年の。道こそめでたかりけれ。足引きの。山のあなたの空遠く。幸ひ住むと詠ひしは。かの外つ国の詩人。我が万葉の憶良は。銀も金も玉も何せむに勝れる宝。子に及かめやも。とこそ詠じけん。げにまこと。子は宝。干戈の響き収まりて。常春藤のいつまでも真幸くあれや少年よ真幸くあれや少女よ』(上歌)
                                             西野春雄謹作、二十六世観世清和謹曲(檜書店謹製)




平成16年(2004年)1月17日
第17回檀の会

○ 当初の予定では当主千俊師の長男崇俊に初番能のシテ(菊慈童)が予定されていたが、変声期の長男崇俊に代わって千俊師の二番能となり、初番は小書(特殊演出)付きの上演となった。

○ 舞台には、引き廻しをかけて、その中にシテが入っている菊籬附大藁屋の作り物が出されたほか、遊舞之楽(ゆうぶのがく)の小書(特殊演出)では、樂(がく)のなかで橋掛へ行き流水を眺める型などなど、華やかなものとなった。

仕舞 白楽天 浅見 真州
西行桜 武田 志房
菊慈童 シテ(慈童)
ワキ(勅使)
松木 千俊
宝生 欣哉
狂言 宝の槌 山本 東次郎
囃子 鞍馬天狗 松木 崇俊
藤戸 シテ(漁師ノ母、漁師)
ワキ(佐々木盛綱)
松木 千俊
宝生 閑

菊慈童
『元より薬の酒なれば。酔ひにも侵されずその身も変わらぬ七百歳を保ちぬるも。この御枕の故なれば。いかにも久しき千秋の帝。萬歳の我が君と。祈る慈童が七百歳を。我が君に授け置き。所はれっけんの山路の菊水。汲めや掬べや飲むとも飲むとも。尽きせじや尽きせじと。菊かき分けて山路の仙路の仙家に。そのまま慈童は。入りにけり』


藤戸
『折り節引く汐に。引かれて行く波の浮きぬ沈みぬ埋木の岩の。狭間に流れかかって。藤戸の水底の。悪龍の。水神となって怨みをなさんと思ひしに。思はざるに。御弔ひの。御法の御船に法を得て。即ち弘誓の船に浮かめば水馴棹。さし引きて行く程に。生死の海を渡りて願ひのままに。やすやすと。彼の岸に。到り到りて。彼の岸に到り到りて。成仏得脱の身となりぬ。成仏の身となりにける』